御曹司と溺甘ルームシェア
私が婚約者って話……野々宮家具が危ないって話、あれはなんだったわけ?

響人の胸に手を当て、抱擁を解く。

「ねえ、佐々木コーポレーションの社長令嬢との縁談が進んでたんなら、あんたが野々宮家具の筆頭株主になって、私を婚約者にしたってあの話何なの?」

「ああ、あれは真っ赤な嘘。最初は親父の言いなりで結婚してもいいかと思ったんだが、あのパーティで寧々を見て考えが変わったんだ。野々宮家具の業績は好調らしいよ。寧々が欲しくて話をでっち上げた。寧々のお父さんや鷹頼に協力してもらってね」

響人は全く悪びれた様子もなく説明する。

『真っ赤な嘘』ですって?

……あんだけ私を振り回しておいて嘘だって堂々と言うわけ?

この悪魔!

「あんたねえ……やっていいことと、悪いことがあるわよ。人の親まで巻き込んで嘘つくな!」

響人のシャツをつかんで非難するが、こいつはしれっとした顔で言い放った。
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