御曹司と溺甘ルームシェア
「嘘でもつかないと、あの時の寧々は婚約者って話に納得しなかっただろ?時には嘘も必要なんだよ。俺が望むモノを手に入れるためには」

カッコイイこと言っているが、騙されてはいけない。

「そんな自分に都合のいい発言ばっかして、あんたさっきのキスで全て誤魔化すつもりだったでしょう!この腹黒悪魔!」

「そんな目くじら立ててると、早く老けるぞ。折角甘いムードだったのに台無しじゃないか。傷だって治るの遅くなるぞ」

私の右頬の傷に触れようとする響人の手をパシッと振り払う。

「あんたが私を怒らせるようなことするからよ。佐々木コーポレーションのお嬢さんとの婚約はどうするの?」

「もちろん破棄に決まってるだろ?責任は全て親父に取ってもらう」

「あの頑固そうな人がそう簡単に折れるとは思えないけど」

「そこは問題ない。親父にはそのうち退任してもらう。ここだけの話、最近防衛省幹部と密会してて怪しい動きをしてるんだ。うちがヤバくなる前に退いてもらう。防衛装備調達は金になるが、癒着はマズイからな。冷泉商事を潰すわけにはいかない。それは、会長も同意見だ」

響人の表情には迷いや戸惑いは感じられなかった。
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