御曹司と溺甘ルームシェア
「それを言うなら、冷泉でしょ!ののちゃんの前だとニコニコしてて気持ち悪いわ。それに、ののちゃんで誤魔化そうとしないでよね。私にあんな単調な仕事させて。どれだけ足が疲れたと思ってるのよ。おまけに手も荒れたし。もうメール室なんか絶対に行かないわよ!」

車の中で言えなかった不満をここぞとばかりに口にする。

「それは残念だな。ののちゃんが悲しむだろうな」

私が文句を言っても、冷泉は余裕顔でやり返す。

「うっ……」

ののちゃんの名前を出され言葉に詰まる私。

そうだ。……ののちゃんとの約束を破るのはマズイ。

「……あんた卑怯よ」

歯ぎしりしながら冷泉を睨めば、こいつは澄まし顔で釘を刺した。

「卑怯で結構。だが、ののちゃんを傷つけるなよ」

……憎たらしい奴。

「わかってるわよ」

冷泉から顔を背け、フンと鼻を鳴らす。

マンションのフロントには二十四時間在中のコンシェルジュがいて、冷泉の顔を見てにこやかに挨拶した。
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