御曹司と溺甘ルームシェア
「寧々ってカップ麺食べた事あるんだ?」

「話を逸らすな、このスケベ男!」

悪態をついて冷泉の胸を力いっぱい叩くが、こいつはびくともしない。

「心外だな。婚約者を抱き締めて何が悪い。俺に少しずつ慣れろよ、寧々」

冷泉は身を屈めて私の耳元で囁く。

ドキッ‼

テノールの魅惑的な声に動揺して手に力が上手く入らない。

……何なのよ、こいつ。

その声……魔力が宿ってない?

これ以上抵抗しても無駄だ。こいつが離れるのを待つしかない。

どれくらい時間が経ったのだろう?

しばらくするとよく知ってるかゆみが襲ってきて、冷泉の腕の中で私は弱々しく呻いた。

「……痒い。冷泉……離して」

一番痒い喉をかきむしろうと手を伸ばすと、冷泉が真剣な顔で私の腕を掴んだ。
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