御曹司と溺甘ルームシェア
エレベーターを降り、ドアを開けて中に入れば、目につくのは寧々の黒いヒールの靴。

それを見て思わず口が綻ぶ。

あの我が儘姫はどうしているだろうか?

フローリングのあの部屋でふて寝しているか、それとも夜更かししてリビングでテレビでも観ているか。

チラリと腕時計に目をやれば、時刻はもうすぐ深夜の十二時。

静かに廊下を歩いて突き当たりの寧々の部屋のドアをそっと開ければ、そこに彼女の姿はなかった。

段ボールの箱を開けたのか衣類の山が出来ていた。

「まだ自分で段ボールを開けただけマシと思うべきだろうか」

今までは家政婦が手伝ってくれただろうが、ここではそうはいかない。

全部自分で片付けてもらう。

ニヤリとしながら部屋を出てリビングダイニングルームに向かえば、ダイニングテーブルに突っ伏して寧々が寝ていた。

テーブルの上には空になったワインの瓶とワイングラス、それにバナナの皮。

「こいつ、やっぱり料理しなかったな」

バナナを食べてる寧々を想像すると笑える。
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