御曹司と溺甘ルームシェア
近づいてワインのラベルを見れば、それは誕生祝いに祖父からプレゼントされた百万相当の高級ワインで……。

「やってくれる」

俺への嫌がらせか?

酒なんかたいして飲めないくせに……。

苦笑しながら手袋をしていない手で寧々の頬にそっと触れる。

「う……ん。冷泉……お腹空いた~」

起きたかと思ってビクッとしたが、どうやら寝言らしい。

ぎゅるるるるーという寧々の腹の虫も聞こえてきて、プッと吹き出す。

「バナナ一本じゃ、そりゃあ腹が減るよな」

寧々の頬を優しく撫でてやる。

触れているのに気づかれたら、「じんましんが出る」とまた文句を言うだろう。

だが、眠っている間は、じんましんは出ないようだ。

鷹頼も心因性のものだって言ってたし、本人が気づいていなければじんましんは出ないのだろう。

厄介な体質。彼女の周りもこれでは苦労する。ひとつ朗報なのは、今日俺が寧々を抱き締めても彼女が俺に対して恐怖を感じなかった事。

俺がじんましんよりも心配していたのは、男性に対する恐怖心。
< 87 / 247 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop