クールな社長の甘く危険な独占愛

社長の部屋に入るのは初めてだ。

壁際には、以前デスクの上で見かけた針金と粘土の人形が、いくつも飾られている。それから有名なクレイアニメーションのポスターに、デザインや映像制作に関する本。経営に関するものは、何一つない。

チョコレート色の二人がけソファに、ガラステーブル。グレーのカーテンが引かれた脇には、緑の観葉植物が置かれていた。

自分の部屋とまったく同じはずなのに、全然印象が違う。ここに比べると、自分の部屋はとても簡素でそっけない。

「座れ」
社長がソファを指差したので、さつきは素直にそこに座った。

「ココアでも飲むか?」
「……はい、ありがとうございます」

社長がカウンターの奥で、お湯を沸かす。その光景がなんだか信じられなくて、さつきはじっとその様子を見つめた。

「なんだ?」
視線に気づいて、社長が笑う。

「いえ、社長がキッチンにいるって、なんだかピンとこなくて」
「コーヒーを入れるか、お湯を沸かすぐらいしかしないよ」

社長は手早くココアを作る。甘くて香ばしい香りが、部屋に満ちてきた。

社長はマグカップをさつきに手渡すと、自分はガラステーブルを挟んだ向かいにあぐらをかいた。

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