クールな社長の甘く危険な独占愛

さつきはマグをガラステーブルにゆっくりと置いた。

「そうですよね。そんな気がしてました」
さつきは微笑んだ。

自分の中での区切りがついた。
社長と向き合う前でよかった。
だって、彼へには、憧れしかないもの。

怖くて、冷静で、恐ろしいほどに頭が切れて、
でも遊び人で、ナルシストで。
絶対に、自分のテリトリーに踏み込ませない。
心を渡さない。
そんな彼に、憧れていただけ。

「実家に帰ります」
さつきは言った。

「有休を消化させてください。一ヶ月分ぐらいあったと思います」
「……ああ」
「明日、会社に『退職願』を出します」

さつきはそう言って、社長ににっこり笑いかけた。

「社長。心では私、負けてました。だって、すごく魅力的な人だから。でも、結局は、引き分けですよね」

社長が瞬きせず、さつきを見つめる。

「私、結婚します」
そう言った。

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