クールな社長の甘く危険な独占愛
「昨日のうちに連絡をくれたらよかったのに」
目黒駅前のコーヒーショップで、昌隆と会った。
「ごめんなさい。夜遅くだったから。でももう大丈夫」
さつきは笑いかけた。
ホッとしたような昌隆の顔。この人は、きっとまっすぐに自分を想ってくれる。
「住むところはどうする? 引っ越しする?」
窓際の席。出勤する人たちが急ぐのが見える。
「私、実家に帰ります」
さつきは言った。
「え?」
コーヒーカップを持ち上げようとしていた昌隆の手が止まる。
「いい機会だと思います。もう東京に思い残すこともないし。実家に帰って、結婚します」
「……本当?」
「はい」
さつきは頭を下げた。
「待ってくれて、ありがとうございました」
「そっか。そうか……」
昌隆の顔にホッとしたような笑みが浮かぶ。
「とりあえず、明日、一緒に帰ろうかと」
「仕事はいいの?」
「はい。秘書は二人いますから、急いで次の人に引き継ぎする必要はないんです。有休も一ヶ月余ってるし。それを使って退職までの間、実家で結婚の準備をしようかと」
「……あの人は?」
昌隆が殴られた頬を無意識に覆いながら尋ねた。
「何もいいませんよ……次のおもちゃはすぐに見つかります」
さつきは笑った。