クールな社長の甘く危険な独占愛
雨が髪を湿らせ、パーカーにシミを作る。マンションに駆け込み、さつきの部屋まで走った。
雨音が激しくなる。廊下の手すりに雨粒が跳ねて、廊下も徐々に濡らしていく。
部屋の前にたどり着くと、チャイムを押す。
部屋の中で音がなっている。
もう一度押したが、答えはない。
我慢の限界が来て、扉を拳でどんどん叩いた。
もう、出て行った?
遅かった?
バケツをひっくり返したような豪雨に変わる。真っ暗な空から滝のような水。
明日じゃダメだ。
あの男のホテルになんか行かせない。
さつきがホテルで一夜を過ごすなんて、俺の気が狂う。
ポケットから携帯を取り出すと、一緒にさつきの退職願も出てきた。和茂はぎゅっとその封筒を握りしめる。
和茂は再び走り出した。
きっと、駅だ。あいつは庶民だから、タクシーなんか使わない。
エントランスの外は、豪雨で白くかすんでいる。和茂は一瞬の躊躇もなく、外に飛び出した。
サンダルできたことを後悔した。水たまりに足を取られてうまく走れない。携帯でさつきに電話をかける。
「出ろ」
思わず怒鳴った。
雨に濡れ、全身が重くなってくる。商店街を抜けて、駅の方向へと走った。傘をさしている人たちが、和茂を思わず振り返る。
「出ろ、バカ」
駅へ向かう人の波のなかで、立ち止まる影が目に入った。
さつきはビニールの傘を肩に乗せ、首を傾げて傘が落ちないように斜めに傾く。カバンから携帯を取り出した。
和茂はその腕を、ぐっと掴んで引き寄せる。さつきの傘が飛んで、濡れた空を舞った。