クールな社長の甘く危険な独占愛

「……社長?」
さつきは驚いて息が止まった。

雨がすごい勢いで身体を濡らしていく。

「あ、傘……」
すでにずぶ濡れの社長を見て、さつきは落ちた傘を拾おうとしたが、社長の手が緩まず引き戻された。

「……は、ダメだ」
「え?」

雨音にかき消されて、何を言っているか聞き取れない。

社長がイライラしたような顔をする。頭から水をかぶって、すべてがずぶ濡れだ。

「結婚はダメだ」

さつきのメガネが雨に濡れて、社長の顔がよく見えない。

「でも……」
「会社を辞めるのもダメだ」

社長は手に持っていた紙をぐしゃっと丸めて道路に放り投げた。

「後任が決まるまでとおしゃるなら……」
雨音に消されないように、さつきは声を張り上げる。

「バカか、お前。なんでそんな鈍いんだ」
「……えっと」

さつきは状況を把握できない。どうして二人ずぶ濡れで話してるのだろう。

「あの……ここで何をしてらっしゃるんですか?」

さつきがそういうと、怒っているような社長の顔が、急激に赤くなる。
真っ赤になって、下唇を噛んだ。

< 115 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop