クールな社長の甘く危険な独占愛
「……社長?」
さつきは驚いて息が止まった。
雨がすごい勢いで身体を濡らしていく。
「あ、傘……」
すでにずぶ濡れの社長を見て、さつきは落ちた傘を拾おうとしたが、社長の手が緩まず引き戻された。
「……は、ダメだ」
「え?」
雨音にかき消されて、何を言っているか聞き取れない。
社長がイライラしたような顔をする。頭から水をかぶって、すべてがずぶ濡れだ。
「結婚はダメだ」
さつきのメガネが雨に濡れて、社長の顔がよく見えない。
「でも……」
「会社を辞めるのもダメだ」
社長は手に持っていた紙をぐしゃっと丸めて道路に放り投げた。
「後任が決まるまでとおしゃるなら……」
雨音に消されないように、さつきは声を張り上げる。
「バカか、お前。なんでそんな鈍いんだ」
「……えっと」
さつきは状況を把握できない。どうして二人ずぶ濡れで話してるのだろう。
「あの……ここで何をしてらっしゃるんですか?」
さつきがそういうと、怒っているような社長の顔が、急激に赤くなる。
真っ赤になって、下唇を噛んだ。