クールな社長の甘く危険な独占愛
「ああ、まったく」
吐き捨てるよう社長がつぶやく。
さつきの両頬を大きな手が包む。さつきは驚いて身を引こうとしたが、力が強くて動けない。
「俺の負けでいいや」
唇が重なった。
雨の音と、自分の心臓の音が重なって、めまいがする。
頬に触れる指は、雨に濡れて冷たくて。
でも唇は熱くて溶けていってしまいそう。
支配するように強く、それでいて優しく。
脚に力が入らない。落ちそうになるのを、濡れた袖を掴んで必死に耐えた。
「好きだ」
唇が離れるほんの一瞬に、社長が囁いた。
「え……」
でもまたすぐに唇を塞がれる。
「好きって?」
「文字通り」
「おもちゃだから?」
「違う」
「じゃあ……」
完全に唇が離れて、さつきの顔をまじまじと見る。
「ごちゃごちゃ聞くな。察しろよ」
また赤くなる顔を隠すように、さつきの濡れた身体を抱きしめた。
冷たい身体。さつきも自然と腕を回す。
ふと周りを見ると、通行人が立ち止まってこちらを見ていた。
「あっ」
さつきは我に返って急激に恥ずかしくなる。
みんなの見てる前で、こんな……。
「ちょ、社長。みんな見てます」
「見せとけ」
「でも……」
さつきが身体を押しのけようと力を入れた瞬間、後ろから「さつきちゃん」と声が聞こえた。