クールな社長の甘く危険な独占愛
周りから驚きのどよめきが生まれる。いつのまにか、三人の周りには人だかりができている。
「社長っ」
さつきは水たまりに倒れた社長に駆け寄った。頬が真っ赤になっている。さつきは驚きで思わずその頬に手を当てた。
「一回、人を殴ってみたかったんだ」
昌隆はそう言うと、手から落ちた傘を拾った。
「……結構痛いもんだな」
社長が顔をしかめながら、立ち上がった。
「さつきちゃん」
昌隆が自分の傘を差し出す。
「さつきちゃんが俺のことなんとも思ってないってわかってたけど、それでもやっぱり結婚したかったな」
「昌隆くん……」
昌隆は一つため息をつくと、横に立つ社長を見上げた。
「決めるのは彼女だ。お前の勝手で振り回したりするな」
「わかった」
さつきが傘を手に取ると、昌隆は一歩下がった。いつのまにか、雨が少し小降りになっている。
「さつきちゃん、じゃあね」
昌隆は手をあげる。
「昌隆くん」
「その男に嫌気がさしたら、帰ってきてもいいよ」
「……うん」
さつきは思わず笑う。それを見て、昌隆も笑顔を見せた。
「さよなら」
そう言うと、昌隆は背中を向け、駅の方へと歩いて行った。