クールな社長の甘く危険な独占愛
いつものピシッとした社長とは打って変わって、のんびりだらだらと後片付けを始める。
人形を箱にしまうと、ブルーのボードを小脇に抱えた。
「それ」
社長がカメラを顎で指し示す。
「持って」
「はい」
「ああ、スーツも」
「はい」
さつきはカメラを片手にもち、ソファの上に投げ出されていたジャケットを持った。
戸締りをして、エレベーターへと向かう。
登ってくるのを待つ間も、さつきは今にも倒れそうなほど緊張していた。
いつ、怒鳴られるのか。
っていうか、常務へのメールが未送信だったことバレるのかな。
恐る恐る横の社長を見上げると、不思議と冷たい感じがしない。
いつもはその空気に触れた途端に凍ってしまうほど、ぴりぴりとしているのに。
地下駐車場を歩くと、ペタンペタンという自分のスニーカーの音が響く。
社長はだらしなく足を引きずるように歩いている。
平日とのギャップに、どうにも、ピンとこない。
白いBMWの前にくると、社長がポケットからキーを取り出し、解錠した。
「あ、左ハンドル」
さつきはしまったと思った。
「左はダメか?」
掠れた声で尋ねられる。
「運転したことないんですけど……でも、たぶん……大丈夫です」
そう言ってから、猛烈に後悔する。
左なんて、無理に決まってるのに。