クールな社長の甘く危険な独占愛

社長が銀縁のメガネをその長い指でとり、どっしりとした木のデスクの上に置く。

「こっちにこい」
社長が手招きしたので、さつきは恐る恐る近づいた。

「御用でしょうか」
デスクの前に立ち、距離感を保つ。

社長がさつきをみあげる。相変わらず綺麗な顔。その唇に視線がいって、さつきは思わず顔を赤らめた。

「昨日のこと思い出してるんだろう」
社長が笑う。

「業務に関係のないことは、考えておりません」
さつきはなるべく硬い声で、そう言った。

「昨日は眠れたか?」
「……はい」
さつきはそういったが、頭の中でキスされたことが繰り返し再生されるので、まったく眠れなかった。

「あの部屋は物騒だ。引っ越せ」
社長が突然そう言った。

「え?」
さつきは慌てた。都内に住むとなったら、今の賃料の三倍はかかる。

「大丈夫です。鍵も変えますし、それに……あの、今引っ越すのは急すぎて……」
「部屋は用意してある」
「でも、家賃が高くて払えないかも」
「心配するな。今日、もう引っ越しの業者が入ってる」
「……はあ?」

社長はそこでニヤリと笑った。それから立ち上がり、さつきに腕を伸ばした。とっさに一歩下がろうとしたが、すんでのところで捉えられる。そのまま抱き寄せられた。

「好きな人を心配するのは当然なんだ。いいから甘えてろよ」

身体がかーっと熱くなる。社長のコロンの香り。

社長がさつきのメガネを外した。

「キスしたい。しても?」
「……会社です」
「俺は自由にキスをするって、言っただろう?」

それから、さつきの唇にそっと口付けた。


< 126 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop