クールな社長の甘く危険な独占愛
社長室の扉が開いて、社長が出てくる。
「長尾、帰るぞ」
「あの、わたしは……」
またキスされたら、今度こそ心臓麻痺で死んでしまう。
さつきは尻込みした。
社長の瞳が冷たく光る。
「おまえ、どこに帰るのか、わかってるのか?」
そうか、新しい部屋に帰らなくちゃいけないんだ。
「すぐに支度します」
さつきは慌ててパソコンをシャットダウンした。
「お先に失礼します」
さつきが頭をさげると、リカが「おつかれさまでした」と言う。
その瞳が何かを言いたげで、さつきは内心気が気じゃない。リカが気付き出している。
「社長」
エレベーターの中で、さつきは思い切って話しかけた。
「なんだ」
「もし、ですよ。もし、わたしがその……社長とおつきあいしたら、部署移動しなくちゃいけないんですよね」
「まあな」
社長が肩をすくめる。「秘書室は社内恋愛禁止だから」
「そうですよね」
さつきは俯いた。
もし本当に付き合うってことにはならなくとも、今のような関係をリカや他の役員秘書に知られたら、どう思われるだろう。
さつきは突然心細くなった。冗談ではすまされない。隣に並ぶこの人は、この会社のトップなのだ。
「もう、堕ちた?」
社長が笑う。
さつきは勢いよく首を振った。