クールな社長の甘く危険な独占愛

着いたのは、いつもの社宅だった。

「社長……ここですか」
さつきはマンションの駐車場で、訳が分からず首をかしげた。

「そうだよ」
社長が車のキーをロックすると、ピピッと駐車場に響く。そのままスタスタとエレベーターへと行ってしまった。さつきは慌てて後を追う。

他に空いているお部屋に引っ越したってことなのかしら。

エレベーターに乗り込むと、カードキーをセンサーにかざす。それから最上階のボタンを押した。

「最上階ですか?」
「空いてるから」

ポンと音が鳴って、最上階に着いた。
扉が開くと、緑を含む空気が流れ込む。

そこに屋根はなかった。

「え? ここ?」
さつきはあっけにとられて、エレベーターから顔を出した。

社長は軽く笑うと、エレベーターを降りる。

「おいで、ほら」
手を差し伸べた。さつきは思わずその手をとる。

小さな木が植わった庭。そして平屋のような作りの部屋があった。門扉もちゃんとある。そこには『桐田』の表札。

「ここって」
さつきは空を見上げた。濃紺の空が近い。

「俺の、本当の部屋」
社長は言った。

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