クールな社長の甘く危険な独占愛
昨晩は、まったく眠れなかった。
さつきはデスクでメガネを取り目をこする。大きなあくびをかみ殺すのに苦労した。
「長尾さん、お疲れですね」
リカが名刺整理をしながら声をかけてきた。
「ごめんね、しっかりしなくちゃ」
さつきは背筋を伸ばし、パソコンに向かった。
お昼の暖かな日差し。社長はランチミーティングに出ていて、秘書室全体にのどかな空気が漂っている。
「長尾さんいろいろありましたもの。今日は早く帰ってくださいね。社長が残っていても、わたしがいますから」
リカはにっこりと笑った。
家に帰ると、余計休まらないのよね。
さつきは心の中でため息をついた。
昨晩はずっと、隣のベッドで眠る社長の布団が、規則正しく上下するのを見つめ続けた。とても眠るなんてできない。緊張で気持ち悪くなりそうだった。その一方で、隣の社長はぐっすり寝ている。さつきが横にいるのに、見向きもしない。
いや、向かれちゃ困るんだけど。
天窓から見える空が白み始めると、さつきはそっとベッドから出て、社長が目を開ける前に部屋を出た。
だって、どうしたらいいか、わからないもの。
社長はいつもと変わらない、冷たいオーラ満載で出社した。どこにも乱れがない。
なんだか腹がたった。