クールな社長の甘く危険な独占愛

昨晩は、まったく眠れなかった。

さつきはデスクでメガネを取り目をこする。大きなあくびをかみ殺すのに苦労した。

「長尾さん、お疲れですね」
リカが名刺整理をしながら声をかけてきた。

「ごめんね、しっかりしなくちゃ」
さつきは背筋を伸ばし、パソコンに向かった。

お昼の暖かな日差し。社長はランチミーティングに出ていて、秘書室全体にのどかな空気が漂っている。

「長尾さんいろいろありましたもの。今日は早く帰ってくださいね。社長が残っていても、わたしがいますから」
リカはにっこりと笑った。

家に帰ると、余計休まらないのよね。

さつきは心の中でため息をついた。

昨晩はずっと、隣のベッドで眠る社長の布団が、規則正しく上下するのを見つめ続けた。とても眠るなんてできない。緊張で気持ち悪くなりそうだった。その一方で、隣の社長はぐっすり寝ている。さつきが横にいるのに、見向きもしない。

いや、向かれちゃ困るんだけど。

天窓から見える空が白み始めると、さつきはそっとベッドから出て、社長が目を開ける前に部屋を出た。

だって、どうしたらいいか、わからないもの。

社長はいつもと変わらない、冷たいオーラ満載で出社した。どこにも乱れがない。

なんだか腹がたった。

< 137 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop