クールな社長の甘く危険な独占愛
食事を終えて、レストランを出た。日差しがきつい。さつきが眩しさに顔をしかめると、武則が「こっち」と影のほうへ腕をそっと引っ張った。
「ありがとうございます」
「暑いよね」
武則はにっこりと微笑んで、自分は日向を歩き出した。
すべてがスマートでさりげない。顔は同じなのに、とても心が穏やかで安心する。
『振り回されないで』
武則の言葉が蘇った。
すでに十分に振り回されている。社長にちょっかいを出されてからのさつきは、いつも落ち着かなくて慌てていて、疲れていた。社長の告白も信じることができない。
彼は、浮ついていて、どこか現実味がない。
「長尾さんは、転職を考えたりしない?」
「え?」
さつきはその言葉に驚いて、思わず立ち止まった。
「転職。和茂と縁を切りたいのなら、転職するしかないだろうと思って」
縁を切る。
さつきは胸がずんと重くなる。
「いえ、考えていません」
さつきは無意識にそう答えていた。
「もし、和茂が迷惑をかけていて、本当に逃げたいと思うのなら、僕はいくらでも職を紹介できるよ。なんなら、僕の秘書にやとってもいい」
にこりと笑う。
「来月末で、秘書の一人が産休に入るんだよ」