クールな社長の甘く危険な独占愛
武則がポケットから名刺を取り出し、さつきに手渡した。
「その気なら、考えてみて」
「……ありがとうございます」
さつきはその名刺をしばらく眺め、それからスーツのポケットにしまった。
会社のビルが視界に入ってきた。
「今日は付き合ってくれて、どうもありがとう」
「いえ、こちらこそご心配いただきまして、ありがとうございました」
さつきは丁寧にお辞儀をした。
「今日は何か社長にお話があっていらしたんじゃないんですか? お言付け承りますが」
武則は笑う。
「いいや、長尾さんに会いに来たんだ。あいつがいないことは知ってたよ」
武則が言った。「長尾さんが心配でね」
笑うと、本当に優しげだ。落ち着いていて、安心感がある。社長もこんな風に穏やかに微笑んでくれたら……。
とくん。
さつきの心臓が、一つ脈打った。
この人はきっと、パートナーを幸せにする人だろう。
社長とは、違う人。
「じゃあ……」
武則は言いかけたが、そのままさつきの後ろを見て、口をつぐんだ。
振り返ると社長が立っている。
「おかえりなさいませ」
さつきはとっさに頭をさげた。
「ああ」
社長が低い声で答え、それから武則を見た。