クールな社長の甘く危険な独占愛

「めずらしい。来てたのか」
「ちょっとな」

さつきは首をかしげた。二人の間には、どことなくピリピリした空気が漂う。

「上がれよ。コーヒーでも飲んでいけば?」
社長がポケットに手を入れたまま、エレベーターの方へ顎で促す。

「じゃあ、寄るかな」
武則は笑顔を崩さず、社長に従い歩き出した。さつきも一番最後から、二人を追って歩き出した。

秘書室に入ると、一斉に「おかえりなさいませ」と秘書が頭を下げた。

「長尾、コーヒーを二つ。しばらく電話は取り次ぐな」
「かしこまりました」

武則は「ありがとう」とさつきに微笑む。社長の横顔は相変わらず厳しく、その対比が不思議だった。

社長室の扉がパタンと閉まると、秘書たちになんとも嬉しそうな表情が一斉に浮かんだ。

リカが「やばい」と小声で喋りかけてきた。

「やばいですよ。あの二人。並んだら、すごい破壊力」
「そう?」

さつきは曖昧に笑って、コーヒーの支度をするため秘書室を出た。

確かに二人が並ぶとまるで映画のようだった。自分は観客で、遠くから眺めているような気分になる。けれどさつきが気になるのは、二人の間に流れる空気だった。先日の食事会の席では、仲の良い様子がみれたのに、今日はまったく違った。

喧嘩でもしたのかしら。

さつきはカップをトレイに並べながら考えた。

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