クールな社長の甘く危険な独占愛

ノックが二回。

「失礼いたします」
さつきがコーヒーを乗せたトレイを持って、社長室へ入ってきた。

膝をついて、ガラステーブルにコーヒーを置く。

相変わらずのひっつめ髪に、メガネ。今朝は起きたらもういなかった。寝起きにいたずらでもしてやろうと思っていたのに。

「ありがとう」
武則が愛想よく声をかけると、さつきの頬がポッと赤くなった。

なんだ、こいつ。

和茂は無性にムカムカしてきた。

「さつきと今、一緒に暮らしてる」
無意識に口から出ていた。

武則が眉をあげた。「本当か?」

さつきが目を見開いて、非難の視線を投げてきた。

「あの、マンションのお部屋に侵入者がいて、一時的なんです」
さつきがなぜか必死に言い訳する。「社長が親切で……」

「ちょっかい出すにも、ひどすぎるぞ。お前が結婚を破談させたみたいじゃないか」
武則の顔に静かな怒りが滲み出すのがわかった。

和茂のお腹の底にどす黒いものが広がる。

背もたれに体を預け、足を組み直した。上から武則を眺める。

いつも、優等生の、兄貴。
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