クールな社長の甘く危険な独占愛
終業後、さつきに「送ってやる」と声をかけると、素直に「はい」と頷いた。一緒に駐車場へ降り、車のエンジンをかける。
車の助手席に座るさつきを眺めた。表情は硬く、緊張しているのがわかる。
とりあえずいつも、俺に見せるのはこんな顔。
どうやったら、武則に見せるような顔をするんだろう。
車を駐車場から出し、夜の東京に出て行く。
「スーパーによっていただけますか?」
さつきが言った。
「なんで?」
「だって、夕ご飯どうするんですか? 冷蔵庫は空っぽですよね」
「何? さつきが作るの?」
「社長はどこかへ食べに行かれますか?」
さつきが生真面目な顔でそんなことを言う。なんとか俺を遠ざけたいってことなんだろうか。
「お前が作るのに、行くわけないだろう?」
「……そう、ですよね」
軽いため息。
キスしても嫌がらないくせに、どうして俺を『好き』と言わないんだろうな、こいつ。
「冷蔵庫には、いろいろ入ってる。日中、家事サービスが入ってるから、適当に入れてもらってるんだ」
「そうですか……贅沢ですね」
不満そうな声音。
どうやったらこいつ、笑うんだろう。
「あ」
さつきが声をあげた。
「なんだ?」
「壁、欲しいです……せめて着替えるときだけでも」
ごにょごにょとさつきが言うので、和茂は思わず笑った。
「オッケー。でも着替えるときだけな」