クールな社長の甘く危険な独占愛
五
着替えるときは、約束通り壁を作ってくれた。それでも落ち着かない。この壁のすぐ向こう側で、社長も着替えているのかと思うと不安で、猛スピードで着替えた。
扉を開けてリビングに出ると、社長はキッチンに立って、冷蔵庫を覗いていた。
「何つくってくれんの?」
社長は冷蔵庫からビールを取り出すと、プシュッとタブを開け、ごくごくと飲み干した。
スーツからジャージに着替えると、他を寄せ付けないオーラが消える。その変わり遊びなれてお調子者の、まさしく「次男」といった感じの社長が現れるのだ。
「なにがありますか?」
さつきは少し警戒しながら、冷蔵庫のそばに寄る。
「なんでもあるよ。俺、リクエストしてもいいの?」
社長が尋ねる。
「……いいですよ」
さつきは身をかがめて冷蔵庫を覗いた。
「じゃあさ」
社長もさつきのそばにしゃがんだ。一気に社長の綺麗な顔が近づいて、さつきは思わず身を引いた。
社長がさつきを横目で見る。
「なんだよ、逃げんなよ」
「だって」
さつきは小さく気合をいれると、再び冷蔵庫の方を見た。
「じゃあ、麻婆豆腐。ここに豆腐とひき肉がある」
社長はそう言うと、さっと立ち上がった。再びビールを口につける。
「手伝う?」
社長がさつきを見下ろし、尋ねる。
「大丈夫です。座っててください」
さつきはそう言って、食材を冷蔵庫から取り出した。