クールな社長の甘く危険な独占愛
キッチンは本当になんでもあった。さつきはリクエスト通り麻婆豆腐を作り出した。ごはんと、スープと、ちょっとしたフルーツも添えて。
社長はその間、リビングの床に座り込み、自分の部屋(壁を取ってしまうと、ただの一角)からもってきた、粘土細工の人形をあーだこうだといじっている。ちょっとポーズをつけると、いろんな角度から眺めて、またちょっとポーズを変える。
すごい集中力だ。一言も喋らない。会社では見ることのできない姿。まるで少年のような瞳で、真剣に動かしている。
さつきはダイニングテーブルに夕食を並べると「社長」と声をかけた。
社長は振り向かない。聞こえないんだろうか。
「社長、ごはんできました」
それでもまだ振り向かない。
さつきはしびれをきらして、社長のそばにしゃがみ込んだ。
「社長? ごはんできましたよ」
「……ん?」
やっと社長が顔をあげた。さつきの顔を見ると「あ、飯か」とつぶやいた。
社長は名残おしそうに人形を見ながらも、素直にダイニングに座った。
「お、うまそう」
「どうぞ。召し上がってください」
社長は箸を手に取った。