クールな社長の甘く危険な独占愛
「……いつまで、こんな嘘をつき続けるおつもりですか?」
社長はきょとんとした顔をして、それから肩をすくめた。
「わかんないな。親父が諦めるまで?」
「前にも……」
さつきは言い淀む。
社長は箸を置き、肘をついてさつきを眺めた。
「何?」
「前にも、こういう風に、偽の婚約者を紹介したことがあるんですか?」
社長はちらっと天井を見上げ、それから「ないよ」と言った。
「じゃあ、本当に婚約した人がいたとか」
「いないけど」
さつきは混乱した。
『あの女の二の舞は困るんだ』
横暴な社長の父親が言ってた言葉は、じゃあ一体どういうことなんだろう。
「なんだよ、さつき。別にどうでもいいことだろう?」
社長はしきりに首をひねっている。
さつきは箸を置くと、真正面から社長を見つめる。
「先日お父様が『あの女の二の舞は困る』っておっしゃってたから、てっきり前にも似たような人がいて、嘘がばれたのかと思って」
社長の表情が、驚いたように変わる。それからなんだか嬉しそうに、頬に笑みを浮かべた。
「ああ、それか」
「兄貴の奥さんのことだよ。さつき、なんでそんなに気にしてんの? もしかして嫉妬とか」
「ち、ちがいます」
さつきは慌てて首を振った。