クールな社長の甘く危険な独占愛
「親父は世継ぎが早く欲しいんだよ。でも美麻に子供ができなくてね。結局離婚させられた」
「離婚させられた?!」
さつきは驚いて大きな声を出した。
「そんな……ひどい」
さつきがいうと、社長は乾いた声で笑った。
「あの家は、そんな家。兄貴も真面目だから、なんとか親父を説得しようとしたみたいだけど、まあ無理だよな。美麻は辛そうでね。だから俺は美麻に『逃げろ』っていったんだ。『こんな下らない家に縛られることない。さっさと離婚して自由になったほうがいい』って」
「……お兄さんは、さぞショックだったでしょうね」
武則の紳士的な笑顔が目にうかんだ。きっとすごく悩んだに違いない。
「まああいつは、もう二度と結婚しないだろうな。美麻にベタ惚れだったから。美麻は最初俺の彼女だったのに、横から来てさっと奪ってったんだよ」
社長が楽しそうに笑う。
「控えめな男が、よくまああんなに情熱的になったなって、驚いた」
「……元カノだったんですか? じゃあ、社長もお辛かったですよね」
さつきが言うと、社長は「別に」と言う。
「まあ、美麻が離婚したときはかわいそうだと思ったけど。別に兄貴にとられたときはなんとも思わなかったな。元カノと言っても、身体だけの関係だし、すぐ次の女は見つかったから」