クールな社長の甘く危険な独占愛

あまりにも社長があっけらかんと言うので、さつきは思わずしかめっ面になった。

「やっぱりひどいですよね、社長って」
「向こうも俺がどういう風に思ってるか知ってて、それでもいいって来てるんだよ」
「……でも真剣に好きだったのかも」

さつきが言うと、社長が「そんなわけないって」と言った。

さつきは腹立たしさを抑えて立ち上がった。食器を片付け始める。社長も一緒に立ち上がり、後片付けを手伝った。

「お兄さんは身をもってよくご存知だから、私に忠告をくださったんですね」
さつきは水を勢いよく流すと、お茶碗を洗い始めた。

冷蔵庫を開けていた社長が振り返る。
「……あいつ、なんて言ったんだ?」

「『女性に本気になったところを見たことがない』って。だから『振り回されるな、離れたほうがいい』っておっしゃってました」

バアンッ。

冷蔵庫を閉めるその大きな音に、さつきは思わずビクッと身体が動いた。振り返ると、社長が冷たい瞳でさつきを見ていた。白いTシャツにジャージという格好なのに、メガネもかけていないのに、そのオーラは痺れるほどに冷たくて、さつきは動けなくなってしまった。

「兄貴は善人面でアドバイスする癖がある。いい迷惑だ」
「……そんなこと……」

言葉が続かない。さつきの心臓が冷えすぎて動作不良を起こしている。社長が本気で怒っているのがよくわかった。

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