クールな社長の甘く危険な独占愛
メーカー営業の三十歳。大学は慶応で、今はフリー。
そんな話を隣で喋り続ける。さつきは相槌を打ちながらも、退屈し始めた。
大学時代に経験した合コンなるものと、社会人になったからといってそう変わるものじゃない。この中でぴったりくる人を見つけるのは、至難の技じゃないだろうか。
「長尾さんはおつきあいしている人いる?」
「……いません」
さつきがそう答えると、隣の男がぐっと寄ってきた。
「そう? すごく綺麗なのに、信じられないな」
「お上手ですね」
「本音だよ」
髪をかきあげ、にこりと笑う。自分が女性にどういう風に写っているか、知っている笑顔。
でもなんだろう。嫌な気分。
「俺、アウトドアが趣味なんだ。行ったことある?」
「ないですね」
さつきは男と距離を置こうとしたが、その間を詰めるように寄ってくる。
「女の子と一緒に、アウトドアしたいと思ってたんだ。よかったらさ」
すごくチャラい。この人すごく遊んでる人にちがいない。女の子もたくさん泣かせてきたんだろうな。社長と一緒の人種だ。
でもなんだろう……社長はこんなに軽薄じゃない。
男の手がさつきの肩に回る。
さつきは思わずぞっとした。逃げようとしたが、ぐっととらえて離さない。
男が顔を寄せる。嫌悪感が増した。
「長尾さん、よかったら……」
男がそう言った瞬間、リカから「あっ」という叫び声が聞こえた。