クールな社長の甘く危険な独占愛
強引に車に乗せられた。エンジンをかけ、夜の街に走り出す。
「怒るなよ」
社長は駄々をこねる子供をなだめるように言う。
「だいたい、俺の好意を知ってるくせに、合コン行こうだなんて方がおかしい。なんだよその前ボタン。胸元をあの野郎に覗かれたじゃないか」
さつきはきっと社長を睨む。
「社長はきっと、そのうち私に飽きます」
「なんでそんなこと言うんだ?」
声に怒りがかすかに混じる。さつきは先日の激昂した社長を思い出し背中がゾクッとしたが、今日は文句を止められなかった。
ハンドルを左に切ると、信号の明滅。ブレーキランプの赤が点々とウィンドウに映る。
「社長はわたしをおもちゃだって言いました。それは今も変わらないんじゃないですか」
「なんだ、それ。『好きだ』って言っただろう?」
さつきはカバンからメガネを取り出した。髪も手早くゴムでまとめる。
「わたしとの関係は、先がありませんよね?」
社長が眉をひそめる。「どういうことだ?」
「誰かと先を見据えた関係を築くつもりはありませんよね? 結婚しないって決めていらっしゃるから」
「それは……」
社長が語気を強めた。「それは、あの親父から大切な人を守るためだ。仕方がない」
「でもわたしには、婚約者の振りをし続けろと言う。身辺調査が入っても、お父様に厳しいことを言われても、それでも秘書なんだから婚約者の仕事をしろ、と。矛盾してます。社長の中は矛盾だらけです」
さつきは社長の美しい横顔を見つめた。
「わたしを大切にしたいのか、使い捨てたいのか、どっちなんですか?」