クールな社長の甘く危険な独占愛
それ以降、社長は黙った。
半端で調子のいいあの人はどこかへ消えて、隣には会社で見せるような厳しい顔をした男性が一人。
再び、会話一つない状態へと戻った。それでもさつきは安堵していた。社長と話すと、そのムードに巻き込まれ自分を見失ってしまう。振り回されるのはごめんだった。
部屋に戻り、可動式の壁を築く。社長と空間を分けることで、さつきは一時的に自分を保てる。今日はもう、壁を無理に退けるようなことはしないだろう。社長の沈黙が、そう語っていた。
シャワーを浴びて、電気を消し、布団に入る。自分の部屋から持ってきた自分の布団だけれど、この空間だと落ち着かない。布団から顔を出し、天窓を見上げた。
漆黒の夜に、白い月明かり。壁の向こうには、社長がいる。寝ているのか、起きているのか気配がしなかった。
さつきは静かに目を閉じて考えた。
たくさんの女性と遊んで、飽きると捨てる。わたしがそのうちの一人じゃないと、どうして言い切れるだろう。それに自分のこともわからない。あの人に惹かれない女性なんて、いないはずだもの。わたしが感じる鼓動は、そんな誰もが感じるものの一つにすぎないんじゃないだろうか。
ベッドが少し沈んだのを感じて、さつきは目を開けた。
社長がさつきを見下ろしている、その目と合った。
月光に照らされて、まるで別世界の人のよう。長い睫毛も、整った鼻筋も、その少し開かれた唇も。