クールな社長の甘く危険な独占愛

「ちょっと気分転換」
社長はそう言うと笑顔を見せた。

秘書室がどよめく。秘書たちにとっては、先日初めて少し微笑んだのを見たぐらいだったので、こんなに爽やかな笑顔を浮かべる社長は初めての経験だったのだ。

「篠山さん、コーヒーもらえる?」
「は、はっはい!」

リカは頬を真っ赤にしながら、給湯室へとダッシュした。

「社長……いつのまに?」
さつきは騙されているような気がして、社長の顔をじっくり見つめた。

「そんなに見るなよ。恥ずかしいな」
社長が柄にもなく照れて、頭を掻く。「明け方、友達の美容師を叩き起こして、やってもらった。文句は言われたけど、倍の金額払うって言ったら快くオッケーしてもらえたよ」

リカがトレイにコーヒーを持ってやってきた。驚いたことに、すごく緊張しているのか、コーヒーカップがカタカタと震えて音を立てている。

「お、お席にお持ちしましょうか」
リカがそう言うと、社長はトレイからカップを持った。「篠山さんがこのまま運ぶと、こぼす気がするな。ありがとう。ここでもらう」

「はい」
リカがトロンとしたような顔で社長を見上げる。

「篠山さん、突然で申し訳ないけれど、役員を招集してくれる?」
「はい」
「長尾さん」

突然名前を呼ばれて、さつきは思わず「はいっ」と大きな声で返事をした。

「いい返事」
社長が笑う。

「いつものように、新聞をお願い」

さつきは混乱しつつも、なんだか嬉しくて「かしこまりました」と笑顔で答えた。
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