クールな社長の甘く危険な独占愛
秘書室がざわめく。他二人の秘書も含め、みんながこれは夢なんじゃないかと、興奮していた。
「どうしたの、あれ」
リカが小声でさつきに話しかけてきた。「超絶にいい男なんだけど、どうしよう」
「わからない」
さつきも首をかしげた。
昨日の夜の様子から、この変貌っぷりは想像できなかった。
「昨日居酒屋に乗り込んだ時とも、雰囲気が違うよね? あれはなんていうの、軽いっていうか」
「う……ん、それは」
さつきが言いかけると、「あっ」とリカが声をかぶせてきた。
「長尾さん、やっぱり社長となんかあったんだ。告白されたの?」
もう言い逃れできない。さつきは仕方なく「うん」とうなづいた。
「でもオッケーしてないんでしょう?」
「うん」
「なんで?」
「なんでって……」
うまく説明できない。社長が一体本当はどんな人なのか、よくわからなかったからっていって、このニュアンスが伝わるだろうか。
「あ、そろそろ、役員会議の時間。支度しなくちゃ」
さつきはそういって、会話を打ち切った。
もっと聞きたそうなリカを置いて立ち上がると、秘書室の扉が開く音がする。
「おはようございます」
武則がそこに立っていた。後ろの二名他の社員も立っている。
「おはようございます。先日はありがとうございました」
さつきは丁寧に頭を下げた。電話をしようとしていた相手が目の前に現れて、さつきは少々動揺した。仕事の話をできるだろうか。