クールな社長の甘く危険な独占愛
「突然で悪いね」
武則はいつもの紳士的な笑みを浮かべた。
「緊急の用件があるんだ。社長はいるかな」
「はい、お待ちくださいませ」
さつきは社長室の扉をノックし、部屋に入ったが、首をかしげた。
なんだろう。いつもと違う。
「何?」
社長がパソコンから顔をあげた。ふわふわの髪が揺れる。
「桐田武則様がいらっしゃっています。緊急のご用件だそうです」
「もうすぐ会議だよね。今いく」
社長は立ち上がり、それからデスクの上の人形の位置を直した。
あ、あの人形。
さつきは驚いた。社長が作っていた粘土細工の人形が、机の上に一つ飾られていたのだ。
「それ……」
さつきは口を開けて社長を見上げる。
「いいだろ、あれ」
社長は満足そうに言うと、さつきの横を通り秘書室に出た。
「タケ、どうした? もうすぐ役員会議だから、あまり時間は取れないけれど」
「……随分イメージ変えたな。どうした?」
武則も驚いて社長の顔を見ている。
「ただのイメチェンだよ。で、何?」
武則が社長の耳に顔を寄せ、厳しそうな顔をした。
社長の眉間にも、深いシワが刻まれる。
「いつ?」
社長が尋ねる。
「明日」
「わかった。今から役員会議なんだ。同席してもらえるか?」
社長が武則に言った。
「長尾さん、ここにいる三名も会議に出席するから、席を作ってもらえる?」
社長が声をかけた。
「かしこまりました」
さつきはリカとちらっと目を合わせる。
きっと何か問題がある。社長の顔から、それがとても深刻だということがわかった。