クールな社長の甘く危険な独占愛

十五畳ほどの白い壁の会議室の中に、長テーブルを余分に一台つけて席を作った。

窓からは広尾の空。今日は晴れ。青い空が眩しい。
それでもさつきの心には、ため池の淀んだ藻のように、不安が揺れている。

深刻な話題のようだ。なんだろう。どうしたんだろう。

「長尾さん、会議に書記として同席してもらえる?」
テーブルの上を拭いていたさつきに、社長が声をかけた。社長はいち早くテーブルにつき、武則と何やら話し込んでいる。

「かしこまりました」
さつきはうなずくと、隅の方に自分の席も用意した。

役員たちが、突然の招集に少し不満げな表情で部屋に入ってくる。けれど社長の姿を目にすると、とたんに目をまん丸くして、口を開いた。さつきの耳には「どうしたんだ、あれ。ご乱心か?」という声が聞こえて来る。

さつきは『若い俺はなめられる』と言っていた社長の言葉を思い出した。確かにこの中で仕事をするのは、容易ではないだろう。

総勢十名の役員が揃い、会議室の扉が閉められた。みんな興味津々という目で、ふわふわの髪の社長をじっと見つめる。

< 181 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop