クールな社長の甘く危険な独占愛
社長が口を開いた。
「突然集まってもらって、忙しいところ申し訳ない。まず、謝罪をさせて欲しい」
社長が立ち上がった。
「これまで、みなさんの力を信じず、自分の思う通りに動かそうと、厳しく冷酷に振る舞ってきた。時にはそのような判断も必要だが、明らかにわたしは度を越していた。本当に申し訳なかった」
役員達がざわめく。お互いに顔を見合わせ、何がおこったんっだと驚いた。さつきも思わず口を押さえる。こんな言葉を社長がいうなんて、想像だにしなかった。
「今後の会社のあり方について、再度君たちの意見を伺おうと思い集まってもらったが、そうは言っていられない事態になった」
役員たちがしんとしずまりかえる。社長よりはるかに年長の人たちが、社長の次の言葉を固唾を飲んで待った。
「明日、『日広』が我が社に敵対的買収をすると公表し、株式の買収を公募するそうだ」
役員たちがごくんと唾を飲む音が聞こえた気がした。さつきの背中に汗が流れる。
社長のお父さんが、この会社を乗っ取るつもりなんだ。強引に社長を家に戻らせようとしている。
「『日広』は、大企業だ。我が社の規模をはるかに凌ぐ総合商社で、我が社の株を所有する企業も『日広』の取引先であることが多い。そうなればこの会社が『日広』の手に渡るのは、時間の問題だ」