クールな社長の甘く危険な独占愛
「お取込み中、申し訳ありません」
振りむくと、リカの顔も真っ赤になっている。
「いや、いいよ。なに?」
社長が尋ねた。
低い声に優しさが混じると、甘くてたまらない。リカの頬がさらに紅潮した。
「役員の方たちが、いらしてます。お会いしたいと」
「そうか」
「あのっ」
リカが勇気を振り絞るように、声に力を込めて叫んだ。彼女のふんわりとした髪が揺れる。
「社長、わたしはこの会社好きです。社長のことも尊敬してます。だから、買収されたくありません!」
社長の大きな瞳が見開かれる。心底驚いた様子だ。
「社員も役員も、みな同じ気持ちですっ。どうか、最後まで諦めずに、一緒に戦ってください」
社長室を出ると、十人弱ほどの役員たちが狭い秘書室に立っていた。
「社長、わたしたちは同じ気持ちです。社長は先ほど心から謝罪してくれた。だから、真摯にわたしたちと向き合ってくれるのは、社長しかいないと思っています。『わたしたち』でこの会社をここまでにした、そうですよね?」
先頭に立つ副社長がそう言うと、社長の唇に笑みがこぼれる。
「そうだよ。俺たち、頑張ったよな」
社長が言う。
「みんな、この会社が好きです。だからこれから、株主に連絡をしてみます。買収に応じないように、お願いしたいと思います」