クールな社長の甘く危険な独占愛

「一緒に、この会社を守りましょう!」

秘書室に溢れる、社長への声。さつきは胸が熱くなった。目に涙がじわっと滲んで、メガネをとって指で拭う。

隣を見ると、社長が信じられないというような顔で役員を見渡していた。頬が紅潮している。

「……ありがとう」
かすれた声で絞り出した。社長の心が動いている。

「じゃあ、もう一踏ん張りして、最後まで頑張ってみようか」
「はいっ」

顔にやる気をにじませて、役員たちが部屋を出て行った。社長はその背中を見送る。

しばらく無言で立ち尽くしていたが、社長は「よし」と小さく声に出した。

「長尾、大口の株主に、片っぱしからアポとってくれ」
「はい」

さつきは勢いよくうなづくと、自分のデスクに駆け寄る。なんとかこの会社を守りたい。その一心だった。

「あ、それから」
社長が微笑む。

「さっきの話は、全部が終わったらまた改めてしような」

電話をかけようとしていた手が止まった。言いようのない不安が膨れてくる。

「はい、かしこまりました」
さつきはそう言って、大きく息を一つ吸った。

「よし」
社長は満足そうに頷くと、くるりと背を向け社長室へとはいっていった。

社長室の扉が閉まるのを見届けると、リカがさっと顔を寄せてきた。

「社長、本気ですね」
「うん、社長あってのこの会社だもの」

さつきがそう言うと、リカが呆れたように首を振った。

「何を言ってるんですか。長尾さんに本気ってことですよ」
リカが笑って言った。
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