クールな社長の甘く危険な独占愛


会社が慌ただしくなった。

社長が懸命になる姿は、新鮮だった。これまでも真剣に会社を経営していたと思うが、一人孤独に戦っているという様子だった。けれど今は味方がいる。

なんだか、いきいきしてるみたい。

会社がピンチのこのときに、さつきはそんなことを思ってしまった。

あの豪華な社長の部屋を出て行こうとしていたけれど、タイミングを逸してしまっていた。なんとなくあの部屋に帰る毎日。社長は深夜三時ごろ帰宅して、五時には部屋を出る。

さつきが目をさますと、社長はすでにいない。

そんな日々が続いていた。

さつきは、朝の光を浴びながら、リビングの社長がついさっきまでいた痕跡を見つめた。脱ぎっぱなしのパジャマを洗濯し、飲み終わったペットボトルを片付ける。

どうなるんだろう、これから。
会社がもし買収されてしまったら、社長は解任されて、きっと日広の経営陣に引き込まれるんだろう。家に戻るってことは、この部屋を出て実家に戻るってことなんだろうか。そうしたら、孫を望む父親の言う通りに結婚して……。

さつきは首を勢いよく振った。

「わたし、何考えてるの」

さつきはどさんとソファに座り込んだ。寝癖のついた髪をかきあげて、昇るオレンジ色の太陽を見つめる。

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