クールな社長の甘く危険な独占愛
「へ?」
さつきの口から、秘書らしからぬ間抜けな声が出た。
肩を抱いている和茂の手に力がこもる。
「余計なことを言うな」
無言のプレッシャーを感じた。
さつきは慌てて笑顔を見せる。
「はじめまして、宜しくお願いいたします」
頭を下げた。
「へえ、カズにしては、珍しい感じの女の子だね」
男性はそう言って、柔らかな笑みを浮かべた。
「はじめまして、兄の武則です。どうぞ座って」
さつきは言われるがままに、席に着いた。
隣を見ると、和茂もあぐらをかいて座っている。
これは……もしかして、顔合わせ?
なんで即席婚約者が必要?
っていうか、これはダメでしょう。
さつきは心の中で、和茂を叱った。
臆病だから、口には出せないけれど。
「長尾さつきさん」
和茂は髪をかきあげ、さつきを紹介する。
武則は、軽く会釈した。
さつきも小さく頭をさげる。
「真面目そうな女性だな。親父もオッケーするんじゃないか」
武則が言った。
「だろ?」
「何してる人?」
「俺の秘書」
和茂がいうと、武則が「意外だなあ。前は『職場で恋愛するなんてバカだ』なんて言ってたのに」と返す。
「まあ、そんな時もあったな。でも……」
和茂が突然さつきの顔を覗き込む。
さつきの頬が思わず熱くなる。
「彼女にあったら、彼女しか見えなくなったんだ。こればかりは仕方がない」
そして甘く笑いかけた。