クールな社長の甘く危険な独占愛
社長の言葉の続き。
わたしを諦めるって言おうとしたんだ。別にそれでいいよね。その方がいいって、わたしも思ってる。だいたい、縁を切ろうと思ってたんだから。
でもどうしてこんなに、胸がちくちくしてるんだろう。
「諦めて欲しくないのかな」
そんなことを口にだして、さつきは再び頭をブンブン振った。
まさか、そんな。
「社長、本気ですね」
リカの言葉が蘇る。
先の見えないことが、不安で仕方なかった。冷酷な企業人でありながら、軽薄な遊び人。冷静な判断をするかと思いきや、一転その場しのぎの嘘をつく。
本当はこの人、どんな人?
その二面性が、絶対に心に踏み込ませない、鉄壁なガードのようだった。
だからどんなに「好きだ」と言われても、さつきはいつも疑っていた。これもまた彼の気まぐれの一言で、本当の社長は何を考えているのかわからない、と。
でも今の社長から、そんな印象は消えてしまった。さつきに視線を投げるときの、暖かさ。慌てるさつきを見て今にも笑い出しそうな口元はそのままに、それでも感じる何か。
こんどは自分の心がわからない。
さつきは「ふう」と小さくため息をついた。