クールな社長の甘く危険な独占愛

窓の外の夜空をバックに、蛍光灯に照らされた秘書室が写っている。社長がいなくなった部屋はがらんどうで、さつきは意味不明な虚しさがこみ上げてきた。

「帰ります?」
リカはそう尋ねながらも、帰り支度をはじめた。

「そう、ね」
胸ががらんどうな気がする。どうしてだろう。

「本当に社長変わりましたよね」
リカがパソコンをシャットダウンしながら言った。

「雰囲気が劇的に柔らかくなった。こんなに追い詰められた状況なのに、全然ピリピリしてないですもん。やっぱりわたし、社長の元で働きたいなあ」
リカが言う。「それにあんなにきれいな顔……ウットリしちゃう。長尾さんが羨ましいです、社長と特別な関係で」

さつきは首を振った。
「特別なのかしら……」

「何言ってるんですか。もうバレバレなんですから。社長が長尾さんを見てる時って、本当に甘いっていうか、溶けちゃうっていうか」
そういうリカが溶けそうな顔をする。

でもこれが落ち着いたら、社長はわたしを手放す気持ちでいる。

そう考えて、胸に裂け目ができるような痛みが走った。引き裂かれるような、鋭い、耐え難い痛み。

「じゃあ、お先にしつれいします」
リカがぺこりと頭を下げ、秘書室を後にした。

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