クールな社長の甘く危険な独占愛
「さつき、まだいたのか」
社長が驚いたような声を上げた。
「おつかれさまでした」
さつきは立ち上がって、頭を下げた。
「帰れって言ったはずだ」
予想外にも、さつきの存在をうっとうしく思っているような、声音。
ついこの間までの、会社での社長の姿が蘇った。
怒らせた。
さつきの心が冷える。
「申し訳ありません。すぐに帰りますので」
さつきは慌てて帰り支度をした。
社長はちらっとこちらを見ると、何も言わずに社長室へと入っていく。
どうしたんだろう。また元に戻った。さつきには踏み込ませないという壁ができている。
心臓がドキドキしてきた。恐れ、そして不安で。
何かあった?
さつきはバッグを肩にかけ、静かに秘書室をでた。エレベーターのボタンを押し、不安に押しつぶされそうになりながら待つ。
何があったの? どうして何も言ってくれないの?
そこに役員の二人が眉を寄せて通りがかった。
「おつかれさまです」
さつきは深く頭をさげる。
「ああ、おつかれさま」
こちらの二人も意気消沈しているようだ。
「長尾さんは、どうするのかね?」
一人が気だるいような声で尋ねた。「このまま勤め続ける?」
さつきの不安が胸の中で爆発した。
まさか、そんな。