クールな社長の甘く危険な独占愛
さつきの心臓が、どうしようもなく動き出す。
即席婚約者にあんな顔を見せて。
反応に困るのに……もう!
さつきはばくばくする胸をなだめながら、精一杯の笑顔を返した。
武則はそんな二人の様子を、注意深く見ている。
なんだか全部見通されているのではないか、そんな気にさせる視線だ。
平日の和茂の瞳を彷彿とさせる。
人を萎縮させる光。
武則と和茂は似ている。線の細い、女子的な美しさを持っていた。くっきりの二重に整った鼻梁、薄い唇。
和茂と違うところは、瞳の大きさと、意思の強そうな眉だけ。
そして和茂同様、すこぶる頭の切れそうな印象だ。
食事会が静かに始まった。
左手のガラス戸からは、日本庭園が見える。
春の日差しに緑が映えて、本当に美しい。
次々と出される料理も、さつきの食べたことのないような、凝ったものばかり。
どうやって味付けされているのか、さっぱりわからないけれど、究極に美味しい。
こんな状況じゃなければ、もっと満喫できたのに。
さつきは、腹立たしさを押し込めて、ニコニコと笑い続けた。