クールな社長の甘く危険な独占愛


夕方の六本木。
早々と遊びに出てきた人たちが、道いっぱいに波を作っている。

タクシーを降りて、コーヒーをおごってもらった。

「俺が飲みたいから」
窓際の席で、長い脚を組み、コーヒーに口をつける。

「いただきます」
さつきはがっかりしている様子を見せないように、無表情を決め込んだ。

「社長は、六本木にもご自宅があるんですか?」
「ないよ」

繊細なフェイスライン。
耳から首、肩にそって、例えようもない色気が出ている。
会社では、必要最低限の接触しかしないから、社長のこんな姿が不思議でならない。

「……社長、どうして社宅に住んでいらっしゃるんですか? 社長ならもっと広い部屋に住めるじゃないですか」

尋ねてから、さつきは速攻後悔した。
『引っ越してほしい』という気持ちを読まれたかもしれない。

「社長に何か意図があって、そのようにされてるのかと……」
慌ててフォローしたつもりが、どうにもうまくない。

「意図なんかねーよ。あれは俺のマンションなんだから、住んだって構わないだろ?」
「社長の?」
「そう、俺のマンション。投資用に買ったけど部屋が余ってるっていうから、社宅にした。会社も近いし都合がいいだろう?」
「……そうですか……」
さつきは、小さくそう答えた。

「何? 引っ越してほしかった?」
にやりと笑う。

「いえ、そんなことは……」
さつきは慌てて首を振った。

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