クールな社長の甘く危険な独占愛
噂には聞いていたけれど、一度も足を踏み入れたことのない、クラブという夜の遊び場。
鼓膜に響くリズムと、人、人、人。
さつきは社長に腰を抱かれたまま、何も言えない。
なぜ、私はここにいる?
「和茂、誰それ」
女性の声が飛んできたが、声の主の顔は暗くてよく見えない。
「俺、こいつと結婚するんだ」
社長の声が、耳の少し上から聞こえてきた。
「はあ? また冗談でしょ?」
女性の声が近づく。
「冗談じゃないよ。本気。可愛いだろう?」
社長の唇が、さつきのこめかみに軽く触る。
さつきは目を丸くした。
今、キスした、この人。
何これ……。
「またすぐ、他の娘と遊ぶんでしょう?」
「遊ばないって。だから今日は、彼女を見せに来たんだ」
「えー」
目が慣れて女性の姿がはっきりしてきた。
スタイルのいい、派手な女性だ。
「さつき、飲むだろ?」
「の、飲んだ方がいいんでしょうか」
「いいに決まってる」
社長がさつきに顔を寄せる。
さつきはまたキスされるのかと、少し身を引いた。
「敬語も禁止。給料からマイナス一万」
「……そんな、横暴な……」
さつきは思わず社長に対して、そんなことを言ってしまった。
「俺が横暴なのは、知ってるだろ?」
にやりと笑う。
「それに、俺を拒否するのも禁止だからな。マイナス二万」
「……はあ」
さつきはもう、力なくうなづくしかなかった。