クールな社長の甘く危険な独占愛

この仕事はストレス以外、何ものでもない。
社長の顔色を伺って、身を小さくしている。

窓からの日差しが、ゆっくりと秘書室を温める。
細かな埃が空気を舞っていた。

現在、秘書室には四名の秘書が勤務している。
さつきとリカは社長つき。
グレーのパーテーションを隔てて、副社長つきの秘書二名が座っている。

副社長は温和な五十代のおじさんで、さつきとリカはいつも隣の二名を羨ましいと思っていた。

痛みがなかなか去っていかない。

さつきは眉間にしわを寄せた。

「長尾さん、髪をいつもキュッと結わえているから、頭が痛くなるのかもしれませんよ」
リカが心配そうな顔で覗き込んだ。

「う……ん。そうかもしれないんだけど。髪が邪魔でどうしても結わえちゃうの。気持ちもピリッとするしね」
「わかる気がします」
リカはうなづいた。

二十五歳のリカは、素直で愛くるしい。
さつきが来てから、社長つきの秘書は二回変わった。
いずれも、社長にこっぴどく泣かされて、やめていったのだ。

その点、リカはどんなに社長に泣かされても辞めていかない。
「辞めたい」とは言うが、ちゃんと出社してくる。
印象とは相反して、意外と根性があるのかもしれない。

さつきの机で内線がなった。社長からの番号。

背筋をのばす。

「はい」
『竹中を呼べ』
「かしこまりました」

内線を切ると「やっぱり竹中さんを呼べって」と言う。

「ああ、やっぱり。竹中さん、ご愁傷様」
リカは目を伏せて、手を合わせた。

これから、社長室に嵐がくる。

さつきも祈るように手を合わせた。

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