クールな社長の甘く危険な独占愛
五
週明け、月曜日。
長い黒髪をきゅっと一つにまとめて、黒縁のメガネをかける。
ファンデーションに、薄いチーク。
仕事をするのに、アイメイクなんて必要ない。
でもどんなに武装しても、今日の自分は間抜けにしか見えなかった。
鏡の中の自分が、とたんに泣きそうになる。
「まずい、どうしよう」
さつきは顔を覆った。
日曜日の朝起きると、すでに昼だった。
頭の中でブラスバンド部が大騒ぎしているような、それはもうひどい頭痛。
自分から立ち上るアルコールの匂いに、再び酔ってしまいそうだった。
自分のベッドで、ちゃんと寝ていた。
なんとパジャマにまで着替えて。
自分らしいと言えば、自分らしいとも言えるけれど。
恐ろしいことに、まったく記憶がなかった。
タクシーに乗ったところぐらいから、きれいさっぱりなくなっていた。
パリッとしたシャツを着て、ネイビーのジャケットを羽織る。
社長と間違っても鉢合わせしてはいけない。さつきはドアをそっと開けると、マンションの廊下を覗き見た。
大丈夫。
いない。
さつきは部屋を走り出て、大急ぎでエレベーターに乗った。