クールな社長の甘く危険な独占愛
おもちゃ
一
すっげー、無表情。
能面みてー。
前髪の間から、ちらっとさつきを見ると、和茂はワクワクしてきた。
緊張してる。
あいつほんと、いろんなこと隠せない女だな。
指にキスをすると、さつきが動作不良を起こしたみたいに崩れ落ちた。
最初は唖然と、それから非難がましく和茂を見る。
つまんない会社が、面白くなってきたかも。
さつきがよろよろと部屋を出て行った後、和茂は楽しそうに椅子にどかんと座り込んだ。
会社を立ち上げてから六年。
なんでこんな面倒臭いことを始めてしまったのか、最近そんなことを考える日々だ。
デザインが好きで、映像が好きで、自分のやりたいようにしたいと思ったら、いつの間にか大きな会社になってしまった。本当はただちょこちょこ、好きなものを作って過ごせればいいと思っていたのに。
和茂は自分のコンピュータに保存してある、アニメーションの動画を開いた。
小さな人形を少しずつ動かして写真を撮る。それをつなげて、あたかも人形が本当に動いているかのように見せるのだ。
これをさつきに見られたのはびっくりした。
『なにこれ、かわいいんだけど』
さつきが言ってた。
和茂はその時を思い出して、少し笑う。
社員の誰にも知られないよう注意してきたけれど、ひとりくらい秘密を知るやつがいてもいい。
そのおかげで、新しいおもちゃが手に入った。
「仕事するか」
和茂はそう言うと、動画を閉じる。
それからにやりと笑った。
「さあ、あのおもちゃに、どうやってキスしてやろうかな」