クールな社長の甘く危険な独占愛
夜。
社長室から、社長が出てきた。
「長尾」
「はい」
社長とは目を合わさない。さつきは社長の頭のてっぺんあたりを見つめる。
「帰る。お前も支度しろ」
「……どこかへ行かれるのでしょうか」
「社宅だろう? 車で待ってる」
そう言うと、社長は振り返らず秘書室を出て行く。
りかが「え〜」と声を上げた。
「送ってくれるなんて、初めてですよね」
さつきはがっくりと肩を落とす。
「ずっと、私が隣の部屋に住んでるって、ご存知なかったみたいで」
「そうなんですか?!」
「でも、そうだと知ったから、送ってくれるって……」
りかが憮然とした顔をする。
「ありがた迷惑ですね」
きっぱりとそう言った。
「ほんとに……」
さつきは涙が出そうだ。
「とにかく、社長が待っていらっしゃるから、早く支度して」
なかなか動き出さないさつきを、りかがせっつく。
「意外と、プライベートは優しい人かもしれませんよ」
りかが励ますように声をかけた。
さつきは曖昧に笑って返す。
プライベートは、とんでもない遊び人です。
さつきは、コンピュータをシャットダウンした。